民話紹介 その2
床下からこのありさまを全部見ていた夫は、あまりのことにすっかりたまがってしまいました。
「こんなに食べるのだもの、どうしてこの世帯が立つものか」
と思って見ていましたが、食べあわったころをみはからって、外の庭にまわって、
「えへん」と大きなせきをしてみせました。
ところが、妻のあわてかたといったらありません。
大釜や大鍋やどんぶりをいそいでかくして、ふとんをひっぱりだして、今度は寝こんでしまいました。
「えへん。」
「はい。あんたははやもどったか。」
夫が家の中にはいってみると、妻は横になって大きな腹をかかえてうんうんうめいていました。
「あまえ、ぐあいでも悪いのか。」
「はい。きょうはもう、どうしたわけか腹が痛うしてたまらん。」
「そうか。じゃが、どういうわけか。」
「どうしたもんか、急に痛みだした。うーん、うーん。」
「それはなんぎなことだ。よし、おれがさすってやろう。」
夫はこういって、妻の大きな腹をなでたりさすったりしながら、
「アーズキ三升、米三升、さば八つ、とうたて三本、大飯じゃった、お腹がつうろん、さあろん、痛かんど」
といったのです。
妻は内心びっくりしてしまいました。そしてうめくのも忘れて、夫をじっと見つめていました。夫が、
「おれは旅に行くふりをして、おまえがすることを全部見ておったぞ。
腹が痛か痛かというが、おまえはアズキ三升、米三升をたちまち煮て、それにさば八つ、とうたて三本を煮しめて食って、それで腹が痛いんじゃうが。
そげん食べれば、この世帯が持つわけがなか。
おまえやきょうかぎりのひまをだすから。離縁じゃ」
といいました。妻は泣いて、
「どうか許してくれ」
といいましたが、夫は、
「ンニャ、おまえのようなのはこの家におきはならん」
といいました。
そこで、妻は家を出て行きました。
夫は妻がどこに行くだろうかと見ていると、海辺のほうにすたすたと歩いて行くのです。
そして、海の中にはいって行きます。
「あれはなにものじゃろうか」
と思っていると、妻の姿がみるみる大きな貝にかわって行き、ぴゅーとしおを吹いて、それっきり海の中に消えてしまいました。
それは千年ながらめという大きな貝でした。
ながらめというのは、屋久島や種子島など南の海にたくさんすんでいる大きな貝で、あわびの一種です。
そこで、夫がいうには、
「ああ千年ながらめが人間に化けてあったのか。あんなのをおいておけばおれのいのちもなくなったかもしれんじゃった。こら、よかった。」
夫はその後またよか妻を迎えて、それから、その家はくらしがだんだんよくなっていきましたということです。
屋久島ツアーで人気の屋久島の民話でした。